現場ブログのコメントからの続きで・・・
大工の発想は、鉛直荷重への配慮というか意識はけっこうすごいものがある。
けっこうすごいとはかなり失礼な言い方だ・・・
永年の経験で培ってきたものが、どれだけすごいか・・・けっして軽んじている訳じゃない。
横架材の梁せいに関しては、構造計算の2割増しくらいが口伝で受け繋がれてきたんだろう。
2間飛んだら尺梁にする。
これはもう常識になっている。構造計算ではケースバイケースだが、8寸くらいで良いとされる時もある。
しかし、梁に梁を掛け、その梁にまた梁を掛ける・・・2次梁、3次梁もけっこうしているケースもある。
これなんかはいい例かもしれないが、水平荷重に関しては、全くと言っていいくらいに考えていない。
大工と話すと、そんなこと一切教えられてこなかったと言う。
要するに地震対策が、一般的な木造住宅では、大工にはその技術がもたらされていなかったということである。
これは一体どういうことか?
世界地図にマグニチュード4.0以上の地震を赤い点でプロットすると、10年で日本列島は全部赤く塗りつぶされてしまう。
これだけの地震国でありながら、木造の工法が受け継がれている伝統がありながら・・・なぜ?
なぜ、鉛直荷重には見事なまでに配慮があるのに、水平荷重にはからっきしなのか?
鉛直荷重は長期荷重、水平荷重は短期の荷重である。
これも言葉の罠かもしれないが、長期というとものすごい長い感じがする。
でも、たかが数十年くらいのことで、目に見えて梁はたわんでくる。
梁がたわむと、その下にある戸が開かなくなったりする。
これでは住んでいる人はすぐに気付く。で、クレームになる。
これでは大工の腕が疑われる。
これでは困るわけだ。
だから、梁せいを十分に確保する。
方や、水平荷重・・・地震のことだ。
短期荷重と言っても、瞬間的に来るものだからして短期と呼んでいるが、大地震というのはいくら地震が多いと言っても、そんなにしょっちゅうくるもんでもない。
マグニチュードで言えば、4.0以下はしょっちゅう来ていて、先ほど言ったようにプロットすると真赤っかになるほどである。
それが我々の小心をも揺らす。
しかし、7.0クラスでしかも直下型、もしくは震源が浅いもの、さらに大地震と言われるものは数百年に一度の頻度である。
実際に、阪神淡路の震災は、そんな頻度のものである。
あの震災が起こる前は、関西には地震はないと思っていた諸貴兄姉氏も多いことだろう。
関西は地震よりも毎年来る台風対策のほうが、身近な悩みなのである。
風に飛ばされないように、重い瓦にするものも頷ける。
重い瓦だから余計に梁せいを増して、鉛直荷重に耐える。
関西にはりっぱな梁の家が多い。
大工も商売であるからして、世間の評判が気になる。
いつも、梁下にある敷居が下がってクレームになっては信用問題である。
しかし、数百年に一度の大地震は、商売としては関係ない。
もっというと、商売としての評判に関係ないとすれば、ころ合いのいい頃に、大地震で適度に家が潰れてくれるほうがよい。
つぶれれば、また建て直すことになる。
大工の仕事になる。
その分、経済活動も活発になる。
地震は天災だ・・・大工が悪いわけじゃない。
理屈は通る。
人間はいろんなことで発達、進化していくものである。
こんな具合に、大工技術が発達してきたとしたら、水平荷重にはからっきしということが頷ける。
進化とは、おもしろいものだ。
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