特に高額になる耐震補強の家とは・・・
実はとてもいい家である。
昭和50年代の立地で、大手のデベロッパーが開発したところで、区画が整理されている団地。
地代が今もって、あまり下がってないところ。
こんなところに立つ、いわゆる”いい家”である。大きな家である。建て坪が35坪以上の家。
屋根は瓦である。屋根形状は切妻ではあるが、棟が何段か重なっているような和風のカッコイイ家。
広縁があり、障子は雪見になっていて、庭も日本風で石が豊富に使っている感じ。
室内の壁は真壁にシックイ。天井も高い。和室が多く、天井は格天(ごうてん)が組み込まれている。
柱も昔のほとんどが33の柱、3寸3分(約10cm)角、中には3寸なんてのもあったりなのに対して、きちんと3寸5分、中には4寸だったりする。しかも檜。
な~んて、ちょっといい感じの和風の家。拙も大好きだ~^^
住んでいる方も耐震診断なのだから、診てもらって安心したいというオーラがけっこう出ている。
こっちも”いい家”なのはわかっているから、「いい家ですね~」と言う。
そうするともう、雰囲気からして、”どうだ!大丈夫だろう”オーラが漂ってくる。。。
「大工の棟梁が仕事にうるさくてね。『いい材料でがっちり作ったよ』って言ってたんですよ^^」と仰る。。。。
必ず、棟梁が太鼓判を押してくれた話をする。
こんな家である。耐震診断して評価が低いのは・・・・・・
計算して提出すると、えええええええええええええええっ~~~~~~オーラが満載・・・、こうなんですか!?
顔色がさーっと蒼くなって、鼻水や脂汗、冷や汗が出ているのがわかる。涙までにじませる。
いやいや実際には平静を装っているが、内心穏やかではないのがわかる。
この手の”いい家”の精密診断での上部構造評点の平均は、0.05くらいである。
なぜか?日本の住宅は夏をもって旨とすべし。
風通りばかり考えている造り。南側には先ほどもいったが、広縁があり障子が並んでいる。耐力壁がない。
唯一の壁は戸袋だ。しかし、ここに、雨戸をとりやすくするための窓が付いているなんてのがある。。。これはこれでとってもいい工夫なのだが・・・悲しいかな開口部になるケースもある。
しかも、裏がトタンでモルタルが塗ってないので、耐力がない。。。
かといって、北側は水廻り、お風呂・洗面所・便所、そして台所と並んでいる。
こっちも風通りを考えて窓ばかり。
南も北も開口部が多く、地震時に頑張ってくれる耐力壁がどこにもない。
それじゃ東と西は・・・、かっこいい出窓がある。雨戸が付いている出窓だったりする。これはぜんぶ開口部になる。
おっと真ん中の仕切り壁は・・・ここには筋交いが入ってないので、耐力換算できない。
おまけに屋根が重い。。。
耐力換算できるのは外壁のモルタルがある。しかしこれが下屋根がせりあがっているので、2階の外壁のほとんどがモルタルの耐力計算出来ない。(このあたりは設計者が注意するところである)
結果、こうなる。。。
もちろん横浜市の補助金申請が通る内容になるから、昨日も書いたが、いろいろあるのでこうなる。
この持ち点(0.05)から、1.0以上に上げないとならない。1.0以上が補助金の条件である。
補強工事費が400万円は越すケースが多い。
こういう方は、補強工事には進まないケースが多い。
がっかりするのと、こんなにかかるのか!となる。
気持ちはわかるが、昭和50年代のいい家は非常に頭を悩ませる。
逆に、建売の小さな家、屋根も軽いトタンで出来ているような家は、補強工事費が低く済む。当然、自己負担も少なくて済む。現実にはこうなのである。
・・・いい家でしょオーラに出会うと、なんて顔をすればいいのか・・・
ハッキリ言うが、決して手抜きでも何でもない。棟梁も一所懸命に建てたのだ。それは嘘ではない。
あちこちに”いい仕事”を見る。そういう仕事に出会うとうれしくなる。
だが、当時の基準がそうだったと言うだけ。いつもそう言ってるが、そのあたりがイマイチ伝わらない。
もうひとつ言うと、大工は垂直方向には知恵がある。技術もある。
水平方向に対する力(地震力・風圧力)にはからっきしである。
ここらが地震国でありながらどうしてか?やはり、日本の伝統的な建築は免震・制震が本道かもしれない。
脱線しちゃいそうなので今日はここらで。。。
後日、制震の話でも。。。
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