昭和50年頃築造の家で、床を直したいという相談でした。
床の張替と内壁の塗り替えだから、特別なことではなく、至ってシンプルな交換工事です。
行ってみると、この家、オイラ好みの和風のいい家なんです。
豪華というわけじゃないんですよ。
しっかり作っているっていう感じ。
あれはなんだろう?堅木には違いないが、さるすべりの木肌のような上品な細丸太で、化粧垂木を施した玄関庇をくぐると、
玄関が両側に開く引分戸で、
腰壁は左官の手間をかけたのがわかる洗い出しの細かな石が光っている。
一目して、掃除が行き届いているのがわかる。
土間は、石畳である。
これが三和土(タタキ)だったら、それこそうれしいところなんだが、そうは問屋が下ろさない。
三和土の土間なんてしばらく見ていないよな~
交換依頼の床は、当然、桧の縁甲板。壁は京壁本入洛。
と、くれば当然、お薦めは無垢材だろう。
今、けっこう無垢の床板でいいのが出てますよ。
それでいて、昔より安いんです。
オイラ好みの相談にうれしくなって、内心勝手に喜んでいた。
その時はまだ、仕事が決まったわけじゃないんだが・・・
広縁の雪見障子も職人のちょっとした工夫、嫌みのないデザインだ。
天井板はお金がかかっている。秋田杉だろう。
何気に、図面があるというので、一応見せてもらったら、
それがまた、すごい図面だ!
この当時の木造在来工法の図面としては、今まで見た中で一番。
基礎伏図をみると鉄筋が入っている。ちょっとビックリ。
屋根伏、小屋伏はもちろん、内部の展開図まである。
矩計(かなばかり)も2枚書いてある。
建築士も、当時、こんな仕事は、そうそうないんじゃないかな。
ここまで持ち上げといて、なんだが、
それでも、当時の壁量は、今とは違い、少ないんだ・・・
そこがオイラの力を入れていること(耐震補強)でもあるんだが、
実は耐震補強ってやつは、こんな、内装工事のときでも、チャンスなんです。
だって、どうせ壁を直すんだから、できれば、しっかりやってほしい。
なにもオイラから、言い出したわけじゃないが、
耐震の話が出たから、説明しただけで、
いつもいつも、耐震耐震って叫んでいるわけじゃない。
でも、聞かれりゃ、キチンとわかるように説明しないわけにはいかないから・・・
なんか、こんなに素晴らしい建物なんだからしっかり、そこまで手を入れる決断をしてほしいと願っているだけなんです。
日本家屋の素晴らしさを維持しながら、地震にもちゃんと備える。
オイラが一番モチベーションの上がる仕事だ~
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